建築基準法上の“道路斜線制限”について知っておこう
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建築基準法には、日常生活ではあまり聞き慣れないルールが数多く定められています。
その1つに、今回解説する“道路斜線制限”が挙げられます。
こちらは、再建築不可物件で行うセットバックとの関係性も深いルールであるため、所有者の方は、ぜひこの機会に覚えて帰っていただきたいと思います。
道路斜線制限の概要
道路の日照、採光、風通しなどに支障が出ないよう、または周辺に圧迫感を与えないよう、建物の高さを規制したルールを“道路斜線制限”といいます。
具体的には、前面道路の反対側の境界線から、一定の勾配で記された線(道路斜線)の範囲内に、建物を建てなければいけません。
また、道路斜線の勾配は、すべての建物に同じ角度が適用されるわけではありません。
住宅に関しては、基本的には1対1.25、住宅以外では1対1.5が適用されます。
皆さんの中には、上部の角が少し削れ、台形のようになっている建物を見たことがある方もいるでしょう。
もちろん、元々そういったデザインの建物である可能性もありますが、同形状の建物が並んでいる場合、それらは道路斜線制限を遵守するため、前面道路から斜線が引かれ、上部が削り取られたような形になっている可能性が高いです。
適用距離について
建物と前面道路に一定の距離がある場合、建物が道路に影響を及ぼす心配が少ないことから、道路斜線制限が適用されません。
このルールを“適用距離”といいます。
なお、適用距離は用途地域や容積率の限度によって異なり、住宅系の地域では、20~35mの範囲で定められています。
道路斜線制限とセットバックの関係性
道路斜線制限の基準となるのは、反対側の道路境界線です。
つまり、建物側から見て、前面道路の奥側の境界線を指します。
また、前面道路と建物を建てる敷地の境界線から後退した部分は“セットバック距離”となりますが、後退させることにより、道路斜線制限の基準が変更されます。
具体的には、反対側の道路境界線だったものが、セットバック距離と同じ距離だけ外側、建物側から見て奥側に移動します。
道路斜線制限の基準が奥側にずれ、なおかつ建物の位置も後退しているため、この場合は通常よりも大きな建物が建築できるようになります。
少し複雑なルールですが、再建築不可物件のセットバックを行う際は、必ず知っておくべきルールの1つです。
細かいセットバック時のルールと適用される道路斜線制限の基準
例えば、上から見ると正方形の建物は、そのまま道路側の壁と道路境界線までの距離を測り、セットバックをすることになります。
ただ、微妙に道路側に突き出ている部分がある建物は、その部分の壁と道路境界線までの距離を測るため、少しセットバック距離が短くなります。
もちろん、この場合は、少し短いセットバック距離と同じだけ、道路斜陽制限の基準がずれることになります。
また、1つの土地に複数の建築物がある場合は、道路側にある建物における道路側の壁と、道路境界線までの距離を測ってセットバックし、これと同じ距離だけ道路斜線制限の基準が移動します。
ちなみに、物置や門、塀など、規定の要件をクリアする建築物に関しては、セットバックの後退距離内に含んでも良い場合があります。
その他の斜線制限について
道路斜線制限は、実は建築基準法における“斜線制限”というルールの中の1種類に過ぎません。
斜線制限に該当するルールには、他にも以下の2つが挙げられます。
・隣地斜線制限
・北側斜線制限
隣地斜線制限
隣地境界線上から一定の高さを基準とし、そこから一定の勾配で示された斜線の内側が、建物を建てられる高さの上限となるルールを“隣地斜線制限”といいます。
第一種・第二種低層住居専用地域、田園住居地域を除く住居系の地域では、隣地境界線上20mの高さから、1mにつき1.25m、商業系・工業系地域では、31mの高さから1mにつき2.5m上がる斜線の内側に、建物を納めなければいけません。
ちなみに、第一種・第二種低層住居専用地域、田園住居地域は、絶対高さの制限が設けられているため、隣地斜線制限の適用がありません。
北側斜線制限
北側隣地の日照の悪化を防ぐため、建築物の北側にのみ課せられる制限を“北側斜線制限”といいます。
第一種・第二種低層住居専用地域、第二種中高層住居専用地域では、真北の敷地境界線上10mの高さから、1mにつき1.25m上がる斜線の内側に、建物を納める必要があります。
ただし、日影規制の対象地域は除きます。
日影規制とは、冬至日において建築物が真太陽時による午前8時~午後4時(北海道は午前9時~午後3時)までに発生する日影の量を制限することで、建築物の形態を制限するルールをいいます。
また、上記以外の用途地域に関しても、北側斜線制限は適用されません。
まとめ
ここまで、再建築不可物件とも関係のある道路斜線制限のことを中心に解説しましたが、いかがでしたでしょうか?
このルールを知らなければ、思うような建物が建てられなかったり、セットバック時に想定外のことが起こってしまったりする可能性があるため、注意しましょう。
正しい知識を身に付け、理想の不動産を手に入れてください。
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