TOPコラム“囲繞地”に関する細かい知識を身につけておこう

“囲繞地”に関する細かい知識を身につけておこう

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一般的な土地は公道に通じているため、所有者が自由に出入りできます。
ただ、世の中にあるすべての土地が、所有者の好きなように出入りできるわけではありません。
中には“袋地”や“囲繞地”のように、権利関係が複雑な土地にあります。
今回は、囲繞地に関する細かい知識を身につけてもらうべく、深掘りして解説したいと思います。

囲繞地の意味について

一般的に、囲繞地は公道に通じていない土地を囲んでいる、周囲の土地を指す言葉です。
ただ、実は本来の意味は、民法と刑法で別々に定義されています。
民法上の囲繞地は、“他の土地に囲まれて、公道に通じていない土地(袋地)にとって、その土地を囲んでいる土地”を指しています。
つまり、一般的な囲繞地の意味は、民法上の定義に当てはまっているということです。
また、民法では、囲繞地の持ち主が、袋地の持ち主の囲繞地通行権の負担を負うことが定められています。
これは、事実上公道に出入りができなければ、袋地の持ち主が自身の土地を利用することができないからです。
一方、刑法上の囲繞地は、“柵等で周囲を囲んでいる土地”という意味を持っています。
そして、刑法上、住居や建物の建っている囲繞地については、建物そのものに侵入していなかったとしても、住居侵入罪(建造物侵入罪)が成立するとされています。
なぜなら、この部分に侵入されただけで、住居利用の平穏が害されたのと同じような侵害があると判断されるからです。

囲繞地通行権の車利用について

囲繞地通行権は、袋地の持ち主が民法上の囲繞地を通過し、公道へ抜け出るための権利です。
ただし、どのような移動手段であっても、囲繞地の通過が許されているわけではありません。
例えば、車などで通過することは、基本的に難しいです。
これは、囲繞地通行権を持つ袋地の持ち主の権利は、囲繞地の持ち主に対し最小限の損害に留めるものとされているからです。
つまり、車で通過できるほど大きな道を設けることは、囲繞地の持ち主にとって大きな損害になるため、認められないケースが多いということです。
基本的には、徒歩あるいは自転車でピッタリ通過できる程度の通行権しか、袋地の持ち主は得ることができません。
もちろん、これはすべての囲繞地に当てはまることではなく、周囲に駐車場がまったくない場合などは、車利用が認められることもあります。

囲繞地通行権の契約内容について

囲繞地の持ち主、袋地の持ち主が交わす囲繞地通行権に関する契約では、以下の内容を明確化しておかなければいけません。

・通行範囲(位置、幅など)
・通行する時間帯
・通行する態様(自転車、バイク、車の可否など)
・期間
・対価(使用貸借の場合は原則無償)

ちなみに、囲繞地通行権に関する契約では、通行する位置や幅について、囲繞地の持ち主、袋地の持ち主の見解が一致しないということもよくあります。
この場合は、訴訟によって裁判所が定めるという方法を取ることも可能です。
裁判所の判断方法はとても細かいですが、基本的には囲繞地の持ち主の意向が尊重され、なおかつ過去の通行の実績が維持される傾向にあります。

囲繞地が接する公道の定義について

民法上の囲繞地には、“他の土地に囲まれて、公道に通じていない土地(袋地)にとって、その土地を囲んでいる土地”という定義があると解説しました。
ここでいう“公道”とは、“通行できる公道”のみを指し、仮に袋地が公道に通じていたとしても、それが現実に通行できない公道であれば、その土地は袋地と同じ扱いになります。
具体的な公道の最低条件には、以下が該当します。

・実質的に公衆が自由、安定的、容易に通行できる
・袋地の通常の効用を実現するに足る幅員を備えている

囲繞地通行権が発生しないケースについて

囲繞地の持ち主は、公道に通じない袋地の持ち主に対し、囲繞地通行権の負担を負わなければいけません。
ただ、公道ではなくても、すでに通行できる通路が他にある場合、袋地の持ち主に囲繞地通行権は発生しません。
わざわざ囲繞地の持ち主が道路を用意しなくても、袋地の持ち主には別の選択肢があるからです。
具体的には、私道であっても、公衆が自由に通行できる通路がある場合、袋地の持ち主が、囲繞地上に通行権限のある通路を持つ場合などが、上記のケースに該当します。
その他、袋地の持ち主と同一人物が、複数の土地を所有しているケースで、その一部が公道に接している場合も、囲繞地通行権は発生しません。
囲繞地通行権は、あくまで他人の土地を強制的に利用する最終手段です。
そのため、自身の土地の範囲内で公道に通じるのであれば、他人に迷惑を掛けないという方向の解釈が取られます。

まとめ

ここまで、囲繞地に関する細かいルールなどについて解説してきましたが、いかがでしたでしょうか?
囲繞地の持ち主にとっても、袋地の持ち主にとっても、これらのルールは非常に複雑ですが、双方が十分な知識を持っていれば、大きなトラブルに発展する可能性は低いです。
もちろん、知識を持つことで、相手方の間違った認識を正当に指摘することもできます。
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